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長引く咳の対処法

「咳が止まらないのはどうして…?」
「咳で息が苦しい」
「咳が長引いて心配になってきた…」
など、多くの方が咳で困った経験はありませんか?市販薬を飲んでも治らず、病院に通院しても治まらず、原因がはっきりしなくて長引く症状につらい思いをしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、長引く咳の症状に対する漢方と自宅でできる予防や対策をお伝えしていきます。

Contents

どうして咳がでるのでしょうか?

せき

咳は日常的な症状ですが、たかが咳、されど咳でもあります。風邪をひいたときの咳であっても、
静かなところで急に出たり、安眠を妨げてしまう咳まで幅広く症状があります。それでは、どうして咳がでるのでしょう。

咳とは?

日本気管食道科学会によると、咳は、気道内に異物が混入するのを防ぎ、逆に気道内から異物を排除するための身体防御機構であると定義されています。咳は、ほとんど全ての呼吸器の病気で起こると言われるほど、呼吸器系の病気ではよくみられる症状です。

咳がでるメカニズムについて

せきのメカニズム

図:第一三共ヘルスケア くすりと健康の情報局HPより引用

咳が止められないのは、咳はからだを防御する反射反応だからです。
ほこりやウイルスなどの異物が入り込むと、咽頭や気管、気管支など気道にある神経セン
サー(気道上皮細胞の間やその下に分布)が刺激を感じ取ります。その刺激が迷走神経求心
路を介して、脳の延髄にある咳中枢に伝えられて、反射(咳反射)が起こり、横隔膜や肋間
幕などの胸郭の組織が急激に動き、咳となって現れます。
また、気道には繊毛と呼ばれる細かい毛があります。この繊毛運動によって、ウイルスや細菌、ほこりなどの異物を外に排出します。この時、異物をからめとったものが痰であり、痰は、咳によって排出されます。

咳は体力を消耗します

咳は、1回するごとに2kcal 消費すると言われています。たった2kcalと思われてしまうかもしれませんが、続くと相当なカロリー消費になります。例えば、咳がひどくて止まらないとして、1分間に咳を2回するとします。すると、1時間に120回することになり、240kclを消費します。苦しかった1時間の咳は、うどん一玉(220g程度)のカロリーに相当します。
咳が続くだけで、睡眠の質が低下し、食事を摂ることも難しく、体重が減る原因にもなります。

咳の種類と原因を知る

  咳といっても、自分の咳と他人の咳は違ったりしませんか。咳の原因の理由はたくさん存在し、それによって対処法も違ってきます。

咳が出る期間からの分類

咳は、症状が出ている期間によって以下に分類されます。

急性咳嗽

3週間未満の咳で、風邪やインフルエンザなど感染症によるものが主です。
咳以外に熱、くしゃみや鼻水、のどの痛みなどの症状を伴うことがあります。

遷延性咳嗽

3週間以上、8週間未満の咳を言い、長引く咳を意味しています。
代表的な原因として、副鼻腔炎、気管支炎、咳喘息・アトピー咳嗽、胃食道逆流症、感染後咳嗽が挙げられます。

慢性咳嗽

8週間以上のもので、代表的な原因として、咳喘息・アトピー咳嗽、胃食道逆流症、たばこ気管支炎、心不全、心因性咳嗽などが該当します。咳が長引けば長びくほど、原因に感染症が占める割合は少なくなってきます。風邪や肺の不調の原因ででる咳の他に、心不全による咳の場合もあるので、咳が長引く時には注意が必要です。
心不全の咳は、肺水腫によって現れます。夜間の咳は息切れし、息が詰まる感じを伴うことも多いですが、起き上がると少し楽になるのが特徴です。心不全が進行すると、仰向けに寝ると咳が続きます。
この他、漢方的には胃肺陰虚の咳なども長引く激しい咳となりますので、鑑別が必要になります。

その他咳嗽:妊娠咳

女性の場合は、妊娠初期にも咳がでます。
妊娠初期の咳や喉のイガイガの原因としては次のようなものが考えられます。
・妊娠によって、女性ホルモンバランスが変化したこと
・妊娠中は、免疫力の低下によって風邪などの感染症にかかりやすいため
・つわりによる吐き気によって、胃酸が逆流してのどまで上がり、刺激で咳き込みやすくなるため
・つわりによる嘔吐で水分不足になり、乾燥するため
などです。
妊娠後期に出る咳は、赤ちゃんの成長と共に横隔膜が圧迫されたり、赤ちゃんの体温と
共に腹部から肺が温められて、乾きやすくなっているためです。咳をするたびに腹部も
圧迫されるので、早産にならないように早く止めたいものです。漢方が得意な分野です。

咳の様子や音からの分類

 咳が出ている期間だけでなく、咳の様子や音からも分類することができます。

湿性咳嗽

 湿性咳嗽の特徴は、「ゴホゴホ」といった湿った咳です。
 ・痰を伴う咳
・鼻・喉に炎症が起きている状態
  痰や鼻汁を気道から体外に出そうとしています。
 

乾性咳嗽

 乾性咳嗽の特徴は、「コンコン」と乾いた咳です。
 ・痰を伴わない咳
・肺や気管で炎症が起きている状態

どのような時間帯に咳がでるの?

ヒトの体は、交感神経と副交感神経のバランスで調整されています。副交感神経と咳は関係しているため、一般的には、副交感神経が優位になる夜から明け方に出やすい傾向があります。咳が出る時間帯での症状をまとめました。

日中続く咳

風邪をひいた後や、インフルエンザの後の咳
後鼻漏の咳 

起きた時、食後に出る咳

逆流性食道炎がある場合、胃酸の逆流が多くなるので、酸が喉の奥を刺激され咳が出やすくなります。

起床時、午前中に多い咳

気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、胃食道逆流症など

夜中から明け方に多い咳

喘息や咳喘息、気管支喘息
心不全
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群

漢方でいう冷え咳もこの時間帯に出ます。

ヒトとの会話時の咳

咳が出たら困ると意識する、ストレスを感じる人と話すなどの心因性の咳

咳の治療方法

せき

咳を止めたいとき、対症療法として薬局で市販薬を求めたり、病院の処方薬を服用します。
以前は効いたのに、咳止めを飲んでもあまり変化はなかったという経験はありませんか?
咳の原因は様々です。咳は本来反射反応ですから、排出したいものがある時には止まりません。咳が続くときは、咳止めを飲んで無理やり抑える対症療法以外に、漢方家に相談してみて体質に合った方法を探してみましょう。

薬の服用

処方薬の代表的な咳止めが、エフェドリンやリン酸コデインです。血圧を上げやすかったり便秘しやすくなる作用もあるので漫然と長期服用するのは、お勧めできません。他にも、デキストロメトルファン(商品名はメジコン)やチぺピジン(商品名アスベリン)が使われます。最近では難治性の咳に、従来とは全く異なる作用機序を持つリスヌアが処方されることがありますが、頻出する副作用に味覚異常があり注意が必要です。

病院で行う咳の検査

胸部レントゲン検査

・肺炎、肺結核、肺がん、肺気腫、胸水、気胸など、呼吸器疾患の有無など肺に影が出る病気を中心に確認する
・1~2週間以上咳が続く患者さんが対象

呼気NO(一酸化窒素)濃度測定検査

・息を吸って、一定の速度で息を吐き出す検査
・呼気中に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測定する検査
・気道中のアレルギーの炎症の程度により、喘息、感染後咳嗽、心因性咳嗽などの病気の判別をする

スパイロメトリー(肺機能検査)

・鼻から空気が漏れないようにクリップでつまみ、計測器とホースでつながったマウスピースを装着する
・肺活量や1秒間に吐き出す空気の量によって、肺活量の低下や息を吹き出す力が低下する病気がないかの確認をする
・喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎などの診断をする

漢方での対処法

せき

風邪の後の長引く咳には、西洋薬の咳止めを使って咳を止めることが多いです。一方漢方では、初期~慢性的に続く咳まで、対応の幅が広く、咳を抑えるだけでなく体質や体調全般を見て薬を選びます。一般的に、漢方薬は副作用が少ないと思われがちですが、漢方薬は本来オーダーメイドで選んでいく薬であり、不用意な服用は逆に害作用となることも考えておかねばなりません。安易に自己判断で服用せずに、医師・薬剤師に相談して服用しましょう。

カゼのひき始めの咳に葛根湯(かっこんとう)

汗の出ない風邪の初期症状、からだがゾクゾクして鼻水が出始めるころの咳に短期に使います。 胃腸の弱い方、心臓の弱い方には不向きで、長期には使いません。

<効能>
・鼻水・発熱・悪寒・頭痛・節々の痛みなど

寒冷じんましんになりやすい冷え性の方の咳に麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

 全身倦怠しやすく、低血圧で頭痛やめまいしやすく、手足に痛みや冷えの強い方の風邪や鼻炎、咳に使います。このタイプの方は、葛根湯を服用すると不快症状が出やすいです。

<効能>
・悪寒・微熱・頭痛・気管支炎・節々の痛みや神経痛

シャバシャバの水っぽい鼻水や痰の出る咳に小青龍湯(しょうせいりゅうとう)

 風邪の引き始めなどで続々寒気がし、色の薄い鼻汁や痰、鼻水を伴った咳の場合に処方されます。咳を鎮める作用は、強くはないのが特徴です。体力が中くらいの人に向きます。胃腸の弱い方、心臓の弱い方には不向きです。百日咳の咳にも使います。

<効能>
・咳・痰・アレルギー性鼻炎、鼻炎・気管支喘息・気管支炎・鼻水

体力のある方の激しい喘息発作に麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

ひどい咳や気管支喘息、熱、発汗、水溶性の黄色い粘った痰を伴う場合に処方されます。比較的体力のある人に向きます。胃腸の弱い方、心臓の弱い方には不向きです。

<効能>
・強い咳や痰が出る・気管支炎・気管支喘息・小児ぜんそく

むせかえる痰のからむ咳に麦門冬湯(ばくもんどうとう)

風邪をひいて中期以降、咳や痰、のどの乾燥の症状がある場合に処方されます。
乾燥した部屋や、布団に入って寝ついた頃に出る激しい咳、粘った鼻汁の鼻詰まりのある時、腹筋が筋肉痛になるような痰のからむ咳に使います。胃もたれや便秘気味になっている方の処方で、下痢をしている方は適応ではありません。妊娠咳にも使います。

<効能>
・痰の絡んだ咳が出る、せき込む
・声枯れする
・痰が渇いて貼り付いたような空咳が続き、痰がひっかかる

カゼをひいて数日たって残った微熱や咳に柴胡桂枝乾姜湯

もともと体力のない方が風邪をひいて数日たち、高熱も引いてのだが、午後になるとぼ~っと微熱が出て、軽い咳続くようなものに向きます。

<効能>
・動悸、息切れ・不眠症・感冒症状

のどにつかえを感じるような咳に半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

喉に梅干しの種が詰まった感じ、トマトの皮が貼り付いたような異物感がある咳や吐き気を感じる場合に処方されます。胃の弱い方が多いです。心身共に疲れやすく、冷え性で繊細な人に向きます。

<効能>
・咳・しゃがれ声・のどに何かつまった感じがする方

寒冷期の夜中から明け方にかけて出る寒咳に甘草乾姜湯

冬の夜中にせき込んで眠れないのはつらいものです。このタイプの咳は、夜明け前の一番寒い時間帯に強く出ます。寒咳とも言われます。夜寝る前に、煎じたものを一服飲んで寝るだけでも楽になります。

<効能>
・咳・気管支喘息・気管支炎

独蔘湯(どくじんとう)

高麗人参の紅参だけを単独で煎じたもので、帰経は肺です。1日9~15gを煎じて服用します。高価ですが、週に何度も起きる喘息発作に悩まされる方が服用して喜ばれます。長期服用で、ぜんそくの改善を助けます。
<効能>
・胃腸の働きを助け、肺に力をつけます。
・長期服用に副作用がなく自然治癒力を高めて健康でいるために、長く続けて飲んでもよい

薬以外での咳の予防と対処法

せき

薬以外にセルフケアとして日常からできる咳の予防と対処法を紹介します。

手洗い・うがい・はみがきで感染予防

原因となるウイルスや細菌と接触し、体内への侵入を防ぐために、手洗いうがいは感染予防に有効です。特にうがいは、のどに潤いを与え、粘膜の働きの低下を防ぎます。咳が出る場合は、咳を抑え、痰を除去することで、のどの痛みを緩和します。

気温湿度のコントロール

ヒトが快適に過ごすことができる湿度は、40~60%だといわれています。気温や湿度は暮らしている環境によって変わります。多湿の場合は、カビ・ダニの増殖になり、アレルギー性の病気やアトピーの悪化、呼吸器系の病気につながります。逆に低湿になると、ウイルスが活発になります。風邪やインフルエンザなどの感染症になるリスクが高まります。気温・湿度が手軽にコントロールできる方法は、喚起です。窓の開閉や換気扇を動かすことで、空気の入れ替えができます。また、空気が乾燥し湿度が低くなる時期は、加湿器の利用や、室内に洗濯物を干すことでコントロールするといいでしょう。

咳にいい食べ物

東洋医学によると乾燥による咳や痰の症状には、肺や喉などの呼吸器を潤す食材が良いとされています。白きくらげ、大根、かぶ、れんこん、梨、柿、りんご、はちみつなどがおすすめです。特に、はちみつは、咳を静める作用、抗炎症作用・殺菌作用・抗酸化作用があります。はちみつならではの、粘り気がのどの粘膜を保護し、潤いを与えてくれます。寝る前にはちみつを一口なめる、はちみつとたっぷりのレモンにお湯を注いで飲むこともおすすめです。食べることは養生でもありますので、日頃から摂りたい食材でもあります。

咳をとめるツボ

天突(てんとつ)

両方の鎖骨の間のくぼみ
人差し指、もしくは中指で軽く斜めに下に押す
気管やのどの症状を改善したいときに使うツボで、刺激を与えると気道が落ち着き、咳がとまる
 

尺沢(しゃくたく)

肘を曲げた時にできるシワの親指側の固い筋の外側
親指で円を描くように強めに押す
肺経と呼ばれる呼吸器に関連するツボ
咳の他、のどの腫れや痛み、ぜんそくなど呼吸器系が優れないときに用いる

孔最(こうさい)

尺沢と掌の親指側の膨らんだ場所の下にある橈骨動脈に向かって線をひき、そのライン上で尺沢から3寸の場所
激しい咳や喘息の時に用いる 

中府(ちゅうふ)

鎖骨の外端下のくぼみからさらに指1本分下
ツボの反対側の手の中指で気持ちいいと感じる強さで押す
肺の気が集まるツボで、呼吸の機能を高めるとして咳や喘息の症状を和らげる

肺愈(はいゆ)

肩甲骨と背骨の中間にあり、肩甲骨の真ん中の高さにある
肺の調子が悪くなると固くなるため、押すことで呼吸が楽になる

呼吸筋ストレッチ

呼吸は、肺の周りにある筋肉が動くことで行われています。この時、呼吸に必要な筋肉の総称が呼吸筋です。代表的なものとして、横隔膜や肋間筋などです。

せき
サワイ健康推進課HPより引用

呼吸筋ストレッチをすることで、肺機能をアップできます。

ストレッチの方法

  1. 両手を頭の後ろで汲み、ゆっくり鼻から息を吸う。
  2. 息をゆっくり口から吐きながら、腕を上に伸ばして伸び上がる。
  3. 首を前に突き出し、腕を後ろに引きながら息を吐ききる。

忙しい方でも、椅子に座って腕をあげながら肘を抱え、背筋を伸ばすことで胸が張
ります。隙間時間にやってみましょう。

能登半島震災や東日本大震災の避難所でおすすめした気道保湿法

鼻腔~気道にかけて乾燥すると、咳き込みは激しくなります。そこで、自分の体温も利用して、咳き込みを防ぐ方法です。簡単なのでやってみて下さい。

方法

  1. ガーゼのマスク、なければ不織布のマスクと折りたたんだガーゼを用意する。
  2. 上から3分の1ほど折り返し、折山を水でぬらす。(不織布マスクにガーゼをかける)
  3. 水で濡らした折山が、鼻の穴の下に当たるようにマスクをする。自分の体温で上がった蒸気が鼻腔~肺を潤します。

毛布をシーツでくるむ

毛布の毛羽立ちとほこりは咳を誘います。簡単なことですが、シーツでくるむだけで呼吸しやすくなります。

まとめ

咳について書いてきましたが、咳を止めるために大切なことは原因を知ることです。喘息の咳かもしれないのに、鼻水に効く風邪薬を飲んでいても治らないし、もしかすると風邪ではなくストレスからの咳かもしれないです。咳止めの薬ならばよいかと闇雲に使うことで、改善が遅れるほか、悪化する恐れもあります。咳が2週間以上続くのであれば、一度、呼吸器専門内科へ行って受診をするか、当店笠原健招堂薬局にてお気軽にご相談ください。当店では、オンラインでの相談も承っております。一人で咳が止まらないことに悩んで苦しむよりも、相談をして、早く健康な日々を過ごせるように自分にあった治療を始めましょう。

笠原健招堂薬局では体調を確認した上で対応しています。

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