紅参/薬用人参とは?
薬用人参は1842年ソ連の植物学者がCari Anton von Meyer(1975-1855)が『Panax ginseng C.A.Meyer』と命名した植物を起源とする生薬である。(「Panax」 = 「ギリシャ語の万能薬」、「Ginseng」は「ニンジン」の意)
人参といっても、セリ科に属するいわゆる「野菜の人参(carrot)」とは全く異なるものである。
(以降、このページの「人参」 = 「薬用人参」を指すものとする)
薬用人参は、土から堀り取られた後の加工方法によって、おおまかに以下の4種類に分類される。
①水参
堀り取られた生の人参のこと。
②生干し人参
人参を堀り取り、よく水洗いして乾燥させたもの。
外観的には黄みがかっており、見た目はあまり良くないが皮がついているため、
有効成分が豊富で品質は高い。
ただし、乾燥しにくいため長期保存が難しい。
③白参
堀り取られた人参を水洗いの後、外皮を剥ぎ取って乾燥させたもの。
皮を取ることで、より乾燥しやすく、見た目の美しさを保たせるのが目的。
美しい白色をしていることが多いが、反面、医薬品としては外皮がないため有効成分が薄く、品質は低い。
さらに、見た目で2種類に分けられる。
足の細い部分やひげ根を取り除き、まっすぐ太い部分だけにした「直参」と、
足を曲げて巻いた「曲参」があるが、いずれも白参である。
④紅参
掘りとった人参を水洗いした後、皮を剥がずに、そのまま蒸して乾燥したもの。
外観は赤褐色で非常に固く、有効成分のバランスも良く品質が高い。
現在の薬用人参は、③の白参と④の紅参の2種を総称した呼び名である。
なぜ、品質のいい薬用人参は6年根?
薬用人参は、その品質が栽培年数によって分けられており、1〜6年根までそれぞれ等級分けされている。
高品質な人参は6年根とされているが、
これは、人参の成長、そして人参の有効成分である「人参サポニン」の含量、
さらにそれがバランスよく均一に含まれるのが5〜6年目にかけてだから。
人参は3年目までは万年筆程度の太さしか成長せず、4年目の根から太くなるため、3年目の根までは有用とは言えない。
5、6年目から急速に寝の体積が増えて大きくなるが、7、8年目に入ると、体積は大きくなるものの、病原菌に弱くなり、根割れしやすくなるため、6年根が良いとされている。
紅参はその加工過程で蒸されており、その理由としては
6年根のような太い人参を外皮をつけたまま乾燥すると、
3〜4年根にくらべ、中から腐りやすいことがあげられる。
その場合でも外皮は腐らず残っているので、
十分乾燥したと思っていても乾燥できていないものも出てくる。
これを回避するために、外皮を除いて乾燥する白参が生まれたのだが、
もう1つ人参を早く確実に乾燥させる方法として、蒸すという手間のかかる方法が考えられ、
その結果として紅参が生まれたとされている。
紅参の効能・効果
紅参の使用目的は、以下の通り。
疲れやすい、動きが鈍い、手足が冷える、疲れると具合が悪くなる、むくむ (気虚碇株)・食が細い、 食欲不振、食後眠い、胃もたれ、胃腸虚弱、顔色がくすんでいる (隅気虚症状)、
息切れしやすい、息苦しい、風邪をひきやすい、話す声に力が無い、夏でも汗をかかない、あるいは汗かき (自汗)、 「市息、 咳き込むとむくみやすい (肺気虚使状)
大まかには、体の恒常性の維持や、回復に使用できる。
特定症状への使用というよりも、広い症状への使用に向くとされており、西洋医学が苦手な不定愁訴を得意とされている。
不定愁訴 =(「体や頭がだるい」、「なんとなくイライラする」、「寝ても疲労感が取れない」、「眠れない」など、
「なんとなく体調が悪い」という強く主観的な多岐にわたる自覚症状の訴えがあるものの、検査をしても客観的所見に乏しく、原因となる病気が見つからない状態)
中国伝統医療における紅参の薬能
中国伝統医療における人参の薬能の基本は、「五臓を補う (大補元気)」であると言われており、
「五臓を補う」とは、食欲不振で疲れやすく、易感染性、胃腸虚弱を改善する「大補元気・補気」という中医学の薬能に相当します。
これは、全身の機能 (生命力:正気)を調えるBRM(BiologiCal Response Modiner)様作用に相当し、
免疫調整作用 (免疫賦活作用)、精神安定作用、微小循環改善作用、消化器調整作用などの薬理であらわされます。
「胃腸虚弱・易感染性・疲労感を改善し、体力を整えて健康維持や病気の予防に貢献する」
つまり『未病を治す』のが人参の基本作用と考えられています。
『補気』と言う薬能は、現代科学では作用臓器や薬理作用を特定し難い全身作用です。
しかし、人参を代表とする補薬 (補剤)の現代医療の中での守備範囲は補気作用と考えておくのが妥当と言われています。
1年にちなんだ365種の薬物を、その効能に従って
・上品(じょうぽん):生命を育むもの、長期間飲んで健康を保つ。120種 (人参・甘草・夜苓・沢潟・黄連・大案・クコなど)
・中品(ちゅうぽん):病気になつた時、病を治し、元気にする。120種 (乾姜・麻黄・葛根・芍薬・牡丹 。当帰・山楯子など)
・下品(げぽん):病気の治療に用いられるが、長く飲み続けてはいけない。125種 (附子・大黄・半夏・蜀椒・常山・甘逐・水蛭など)
の三品に分類し、世界でもっとも古く、かつ完備された栗物書として評価が高く世界各国で翻訳されている
中国最古の薬物書の『神農本草経』(前漢~後漢)では、
人参は、上薬 (上品)に分類され
「 ①五臓を補い、 ②精神を安んじ、・・」と全身状態と精神神経状態を改善する薬能が、
また、6世紀に追補された『名医別録』には
「③腸胃が冷えて心腹鼓痛し・・・種乱吐逆するを療し・・・ ④渇を消し、 ⑤血脈を通じ・・」などと具体的な薬能や主治が記されています。
②の「精神を安んじ・・・」と言う薬能は、抗ストレス作用に、
④の「渇を消し・・」と言うのは糖尿病に生じる自党症状や、咳・声枯れ・皮膚乾燥傾向の改善に相当し、
安全性が高く、広範に使用されることが多い。
紅参・人参使用の注意
- 人参類の安全性は高いが、乱用や漫然とした使用には注意が必要である。
- 人参の副作用は軽く、頻度も高くないと思われる。
虚証の薬であることを踏まえての使用で防ぐことは出来る。服用によるのぼせ感、頭痛など軽度の警告症状を注意深く見ていくことで防げる。 また、食品として使用する場合も、「上薬(上品)だから、薬食同源で食品と同じで長期に服用しても安全だ」と誤解して、服用者に対する必要な注意を怠らないこと。 - 『Ginseng Abuse Syndrome(人参乱用症候群)』 と呼ばれた病態も安易な長期服用に誘発された。
※かつてアメリカで人参製品の乱用による血圧上昇などの副作用が警告され、
今でもこの頃の警告のみが、医師・薬剤師の間で一人歩きしている。 (この頃の人参はアメリカ人参が使用されたと聞いている。)
紅参の抗血栓・抗凝血作用について
The-GINSENG-REVIEW-第7回薬用人参研究会-p57-61紅参の血小板凝集抑制作用
産婦人科領域に関する作用
糖尿病に対する作用
ー21世紀は予防の時代ー 紅蔘健康法-五臓六腑に効く 松山赤十字病院名誉院長 松山恵一先生著より
参考文献リスト
The GINSENG REVIEW 1983Vol.1,No.1 | 目次 |
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The GINSENG REVIEW 1983Vol.1,No2 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1984Vo.2,No.1 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1984Vo.2,No.2 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1984Vol.2,No.3 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1985Vol.3,No.1 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1986.,No.4 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1987.,No.5 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1988.,No.6 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1989.,No.7 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1989.,No.8 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1990.,No.9 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1990.,No.10 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1991.,No.11 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1991.,No.12 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1992.,No.13 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1992.,No.14 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1992.,No.15 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1993.,No.16 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1994.,No.17 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1994.,No.18 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1995.,No.19 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1995.,No.20 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1996.,No.21 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1996.,No.22 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1997.,No.23 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1998.,No.24 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1998.,No.25 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 臨時1999.,No.26 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 1999.,No.27 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 2000.,No.28 | 目次 |
The GINSENG REVIEW 2001.,No.29 | 目次 |